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プラダ+財布+メンズ編集

「わあ、凄い!」  ゆう子が、嘆声をあげた。 「地下宮殿みたいだわ。東京の人間でここまできたの、私たちがはじめてじゃないかしら。女性週刊誌に報告すると、売れるわよ、きっと」  ゆう子が地底湖を覗きこんだ。  足許に岩場がある。  渚をへだてて、深い渓谷も右手にある。  今だ! と秀彦は自分に命じた。  かついでいたナップザックを肩からはずした。その細い紐をのばして背後から不意に、ゆう子の首に巻きつけた。  跳ねた。驚愕の声があがる。声はだが、ぐぐっとすぐに、低くこもった。悲鳴には、ならなかった。ゆう子は、もがいた。秀彦は、無我夢中だった。  首をしめつづけた。足許の岩が、くずれた。ゆう子を抱きしめ、首を締めたまま、渚に転がった。それでも細い紐は、はなさなかった。  腕の中でもがいていたゆう子が、やがて重くなり、動かなくなり、ぐったりとした。どれだけの時間がたったか、わからない。紐をはずし、ハンディライトをあてた。水際に倒れた、ゆう子の髪が、流れにひたされている。  ゆう子のその白い顔をみた瞬間、はじめて恐怖が秀彦をつかんだ。よし、これで終わった! という達成感よりも、一刻も早くここを逃れたいとする、足がふらつくような恐怖の思いだった。  ……それからの数十分。ひやっと、首すじにあたった冷めたい水滴。ぐったりとなった重い身体をその洞窟の奥に隠し、衣服をすべて剥ぎとり、逃げてきたときの足許の暗さ。岩角や石柱や石筍に身体をぶつけ、リムストーン・プールとよばれる水溜りや段丘湖や地下河に転んだりしながら、出口にむかって一散に走る。走りながらも、今にも女の白い手が、闇の奥からするするっと追いかけてきて、肩口をいきなりつかまれるのではないかと怯えながら、なおも走りに走ったあの出口……。  ……その女の白い手が、今にも後ろから肩をつかみそうだ。  ひどく、息苦しい。もう少しで、海面上に脱出できるのだが、水深は意外に深くて、なかなか水面には到達しない。肺が破裂しそうに苦しく、心臓が空まわりし、思わず、助けてくれえッ! と叫び声をあげて、秀彦は自分のその声で、眼をさました。 「あなた、あなた。どうなさったの!」  白い手が、やはり肩をつかんでいた。
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